訪問介護で働き続ける理由と魅力
西川めぐみ/介護従事歴6年・介護福祉士
介護職として施設介護で1年、訪問介護で5年の経験を積んでいる西川めぐみさん。現在は訪問介護事業所ulu(うる)にてサービス担当責任者として働いています。西川めぐみさんに介護に対する想いややりがい、つらかった点についてお話を伺いました。
1人ひとりに向き合える訪問介護にやりがいを感じる
――施設介護と訪問介護、どちらも経験があると伺いましたが、現在訪問介護で働いている理由は?
施設介護では、1人の利用者さんに対して接する時間が少なく、やりがいを感じられませんでした。どんなに話をしたいと言われても、時間で仕事内容が区切られているので「ちょっと待っててね」と言ったあと、結局話せずに勤務が終わってしまうことも少なくありませんでしたね。
そういったときに、私には施設介護の勤務が合わないと感じてしまいました。
訪問介護では、1人ひとりの利用者さんと向き合って支援ができるので、やりがいを感じながら働けています。
信頼関係を築くことでつらいことが嬉しさに変化した
――訪問介護を通じてつらかったことは?
訪問介護を始めたばかりの頃は「同行」といって、先輩のヘルパーとペアで訪問していました。
同行で経験を積んだあと、独り立ちして訪問をしたとき、利用者さんからは「これができていない、あれができていない」とか「あれを取ってきて」といった要求をされることもありました。
強めに指示されてしまうと”自分が学んだばかりの仕事内容とはまったく違うと感じてしまい”そのときは辛かったですね。
でもその都度わからないことは利用者さんにその場で素直に質問し、回答をしっかりと理解することで、問題解決につなげました。
――コミュニケーションが解決の糸口となったのですね。
そうですね、私たちの思いだけでは伝わらないですし、利用者さんから一方的に言われるだけでは理解もしにくいです。
だからこそ、両者がコミュニケーションを取れるように努力しました。
コミュニケーションを取ることで相手の思っていることが分かるようになり、それを念頭に置いて行動することができるようになると、介護のやりがいがわかるようになりました。
辛かったことでもありますが、結果的に信頼関係を築けることが嬉しさややりがいに変化しましたね。
夜勤で重要なことも利用者さんとの日々のコミュニケーション
――西川さんは夜勤も支援されているとのことですが、日勤とどのように異なりますか?
夜勤は、昼間に比べると勤務時間が長いので、大変なときもあります。
昼間は最長でも 4、5時間ですが、夜勤だと1回の勤務が10時間以上になります。
時間が長い分一部の時間はゆっくり過ごすこともできますが、日中には手が回らない業務があり、利用者さんのお宅をすべて管理しないといけないんです。
精神的な病気を抱える利用者さんに関しては、夜間に気分が落ち込むことがあるのであるので、そのような状況に対応しなければなりません。実際、対応に追われると仮眠を取る時間がないこともありますね。
こういった夜の気分の落ち込みに関しても、利用者さんと日々コミュニケーションが取れているかどうかによって、状況が変わってくると感じています。
普段からコミュニケーションが取れていると、利用者さんの気分を落ち着かせることや気持ちを理解できると思っています。
個人で行動する訪問介護でも従業員同士のコミュニケーションは大切
――訪問介護は利用者さんとヘルパーが1対1でのやり取りになることが多いと思いますが、トラブルがあったときの不安は大きかったのではないですか?
施設介護で勤務していたときはトラブルが発生した場合でも、すぐに周囲の人に助けを求めることができました。
でも訪問介護の現場では施設介護のように複数人で介護にあたるわけではないので、トラブルが発生したときのことを考えると正直最初は怖いと感じていましたね。
――実際にトラブルがあったときにはどのように対処していたのですか?
訪問介護の新人のときは先輩ヘルパーと一緒に訪問し、疑問や不安がある場合、すぐに質問できました。
1人で訪問介護を行うようになってからも、支援活動を通じて発生した疑問点をまとめて、その日の終わりに先輩ヘルパーに確認をすることで不安な気持ちを軽減できましたね。
もちろんその場で即座に判断し、私自身で考えて行動を起こす必要もあります。
そのあと、自分の行動が適切だったかどうか、自問自答することも多いです。
特に「あのときの行動は正しかったのか」と疑問を持ったときは、上司に都度確認していました。
訪問介護は施設介護と比較して、個人で行動することが多くなりますが、従業員同士のコミュニケーションは大切だと感じています。
尊敬できる上司についていきたかった
――訪問介護事業所uluで働くことを決めた理由は?
今の上司がuluを立ち上げると聞き、ついていきたいと思ったことがきっかけです。
立ち上げる話がなければ、単に以前の職場を辞めていただけかもしれません(笑)。
上司は強い信念を持っていて、ヘルパーのことも利用者さんのことも深く考え、全体を見渡せる人です。
――具体的なエピソードがあれば教えてください。
訪問介護だとシフトを自分で決める自己申告制なので、ときどき自分自身でスケジュールを詰め込みすぎてしまうときがありました。
上司はそういった状況でも、ヘルパーの業務量をきちんと把握してくれていて「この仕事はほかの人でも行けるよね」「無理しすぎないでね」と言ってくれるので、1人が過度な負担を感じることなく働けるよう配慮してくれています。
とても感謝しているし、何より尊敬しているんです。
私がuluで働き続けている理由の1つは、尊敬できる上司と一緒に働けていることです。
私もいつか、上司のような尊敬される人になりたいと思っています。
介護では本人の意思を尊重することを大切にしている
――利用者さんに対して大切にしていることはなんですか?
「相手が何を思っているのか」「何をしたいのか」を理解して、利用者さんの想いに共感することを大切にしています。
動けないからといって、自分本位に「できない」と決めつけずに、「動けなくても本人がやりたいと思ったら、手伝いながら一緒にやる」という気持ちが大切だと思うんです。
(支援が終了し帰宅する西川さん)
――例えばどのようなことを一緒に行うのでしょうか?
例えばミニカーの収集が趣味の利用者さんは、ミニカーを箱に並べたり、利用者さんに見せながらテーブルに並べてみたりして一緒に楽しんでいます。
身体が不自由であっても好きなことや、やってみたいことは、大切にしていきたいと思う瞬間ですね。
本人がやりたいと思ったことができたときや「ありがとう」と言って感謝してもらえることは、とても嬉しいです。
――反対に利用者さんからやっておいてほしいと言われることもあるのでしょうか?
はい、そうですね。
人はみんな、その日の気分でいろいろ感じることがあると思うんです。
一緒にやるときもあれば、私の方で片付けておくねと伝えるときもあるので、本人の意思を尊重して支援しています。
介護の本質は「”その人らしさ”に近づけること」
――最後に未来で一緒に働く仲間にメッセージをお願いします。
私たちの目標は、登録ヘルパーさんがどんどん増えてくれることです。
訪問介護は1人ひとりが貢献できる、大切な職業です。私自身も訪問介護を通して、価値のある経験を積んできました。
もちろん始める前の不安や疑問はあるかもしれませんが、私たちのチームには頼りになる上司がいるので、安心して仕事ができる環境です。
介護の本質は「利用者さんの”その人らしさ”に近づけること」だと私は感じています。
利用者さんの生活に日々関わり、支えることから始まります。
私たちが行う介護は、単に身体的な支援だけではなく、利用者さん1人ひとりの人格、個性、生活スタイルを尊重し、”その人らしさ”を維持するためのサポートです。
私たちと一緒に、利用者さんの生活に深く関わりながら、やりがいをもって頑張っていきましょう!
(取材・文/鳥居)